FC2ブログ
2016-09-19

1年ぶりの運転

 今日俺は一年ぶりに車を運転した。しかも明るい時間帯じゃない。もともと運転技術がそこまであったわけではない俺だが、さすがに一年も運転をしないのは良くないと思った。危機意識を高く持つという意味で、遅い時間帯を選んだ。
 そういうわけで運転リハビリのスタートだ。
 目的地はガソリンスタンド。家から出て時速五〇キロで向かう。
 交差点を右折するとき、対向車線で右折しようとしている車が邪魔で、対向車線から車が来ているのかいないのかがなかなか判別しづらく無理に進まずにいた。やがて信号は黄色になり、矢印が出たので進む。こういうとき、本当に矢印はありがたい。
 対向車線にパトカー発見。大丈夫だ。メーターではいま五〇キロ。そしてここも標識で五〇キロだ。悪いことは何もしていないのに、パトカーを見るとふと不安になる。やはり、車と歩くのは全然違うな。
 人気のない道を走っていると、本当に人が飛び出してきそうで不安になる。このあたりは大きな公園があり、住宅街でもある。さすがにこの時間帯で子供が出てくることはないだろうが、油断は禁物だ。今のご時世塾通いのお子様も多数いる。それに教習所でも教わったではないか。「だろう」運転はダメ、「かもしれない」運転にしなさい、と。
 なんとかガソリンスタンドまでたどり着く。俺の車しかおらず、どこに止めるかは選び放題だ。えーっとどっちにしよう……。
 このとき、俺は間違えてアクセルを踏んでしまった。車が加速して前進したときは非常に焦ったが、すぐにブレーキ。思いっきり踏んだブレーキで、大きな慣性力が働いた。
「お前何やってんだよ!」
 隣に乗っている父親も驚いていた。そりゃそうだ。
 とりあえずバックし、給油しやすい位置に停車。
 以前にもコンビニに駐車するときにブレーキとアクセルを間違えたことがあったが、今回もそれが出てしまった。幸いないことにどちらも事故にならずに済んだが。毎回これが嫌になる。給油中、そんなことを思っていた。
2016-09-16

集大成

 その日はゼミがあった。毎週決まってその曜日はゼミなのだが、夏休み最初の日ということもあって気が抜けない。加えて、前日の夜に先生がみんなにメールを送っていて、「卒業論文は今の段階で八千時は行っているはずです」とあり、僕は一人驚愕していた。おそらくみんな「まずい」と思ったはずである。同時に「そんなこと言われてないから知らない」と思ったに違いない。僕自身、聞いていた話と違ったように思う。
 しかし、先生がそうだというのなら仕方がない。ゼミでは先生がトップであり、絶対の正義。先生が学生に点数を与えなければ、僕たちは単位を手に入れることができない。そういうわけで、昨晩の僕はパソコンの画面とにらめっこしていた。日付が変わる前には布団に入ったつもりだが、ぐっすり眠れなかった。
 一応、当日のゼミの内容はメールにあったので、それを元にWordで文章を作っておく。夏休み中の研究成果、現在直面する課題、今後の研究の進め方……。これを一人十分でプレゼンテーションしなければならない。
 研究成果も何も、取り組み始めたのは今週だぞ、直面する課題? なんじゃそりゃ、今後は本を読みつつまたは文章を書きつつ進めていくしかないよなぁ、などと思いながら用意した。
 ところがである。
 先生はみんなの現状を聞いて、今後のゼミの方針を話して解散としてしまったのだ。いつものことだが、先生はおっちょこちょいで忘れることはよくある。正義だっていつも固いわけではない。仕方のないことだ。
 それに、内心、みんなは(そもそもみんなも忘れていたかもしれないが)良かったと思っているはずである。なぜなら、全員、進捗状況が思わしくないからだ。そんなときに一人十分も与えられてプレゼンテーションなんてできたものではない。だから僕は、みんなが解散しているところに、どさくさに紛れて先生にまとめたプリントを渡す。それで思い出しかのように声を上げる先生だったが、それで終わった。
 ひとまずはこれで良かったと思うのだが、安心はできない。卒業論文は終わっていないのだ。就職活動というラスボスを倒したかと思いきや、真のラスボスが現れた感覚に近い(そこまでゲームをやらないので、そんなゲームがあるのかは知らない)。
 ただ、先生が言っていた言葉が非常に印象深い。
「小学校入学から今日までの、学びの集大成です。同時に、これまで君たちを育ててくれた社会への、君たちからのプレゼントでもあります。そう考えると、『つまらない卒業研究』で適当に締めくくれなくなるはずです」
 そうだ、今年度で僕はおそらく学校というものに通わなくなる。それを考えると、本当に卒業論文とは学びの集大成なのだ。
2016-09-15

【遊戯王】どこかで見たことがあるイラストのカード【Kozmo】

 遊戯王カード。それは十数年前から流行しているトレーディングカードゲームだ。ギネス世界記録では「参加人数が最も多いカードゲーム」として載っているらしい。
 モンスターや魔法(マジック)、罠(トラップ)といったカードを利用し、基本的には8000あるライフポイントをゼロにした者が勝者となる。勝利条件は他にもあるが、基本はライフポイントをいかに削るかが重要だ。

 その遊戯王で、先日日本で初登場したカードがある。『Kozmo』という、「オズの魔法使い」と「スターウォーズ」をモチーフとした世界観を持つイラストで構成されたカテゴリだ。
 僕は今日、そのカテゴリで友人の超重武者(遊戯王ARC-Vにて登場する権現坂昇が使用するカテゴリ)デッキとデュエル(対戦)してみた。
 友人が使用する超重武者デッキの特徴は、魔法・罠をほとんど使わず、基本的にはモンスターの効果に頼ることが多いデッキだ。
 対して、僕が用意したKozmoデッキは、モンスター効果で自身を除外し、手札、あるいはデッキからモンスターを特殊召喚し、展開していくデッキだ。もちろん、魔法や罠も使う。だが、エンジンとなるのはやはりモンスター効果だ。
「Kozmaを感じてるか?」
 ぼくがふざけると、笑うことなく友人は言う。
「それをいうならコスモだろ」
 聖闘士星矢がわかる相手で良かった。
「基本的にKozmoは先攻でやるデッキみたいなんだけど、まだちょっと事故るから手札が多い後攻にさせてもらえない?」
「いいだろう、デビュー戦ではいい気分になりたいもんな」
 友人を気遣いに感謝し、僕らは声を合わせて言う。
「デュエル!」
 
 先攻のプレイヤーはドロー(デッキと呼ばれる山札からカードを引くこと)はできない。友人は「超重武者カゲボウ−C(星3 地属性 機械族 ATK500/DEF1000)」を召喚し、すぐさまそれをリリースする。カゲボウ−Cには「このカードをリリースして発動できる。手札から「超重武者」モンスター1体を特殊召喚する。」という効果がある。手札の「超重武者ビッグベン−K(星8 地属性 機械族 ATK1000/DEF3500)」を守備表示で特殊召喚。いつもの流れだ。
「さらに、ビッグベン−Kを対象に超重武者装留グレート・ウォール(星3 地属性 機械族 ATK1200/DEF1200)の効果を発動、手札からこのモンスターを守備力1200アップの装備カード扱いとしてその自分のモンスターに装備する」
 これでビッグベン−Kの守備力は4700。
 通常、遊戯王カードのモンスターは守備表示(カードを表側横向きにした状態)では攻撃が行えない。しかし、超重武者にはそれを可能とする効果がある。
 ビッグベン−Kの永続効果に「このカードがモンスターゾーンに存在する限り、自分フィールドの「超重武者」モンスターは、表側守備表示のままで攻撃できる。その場合、そのモンスターの守備力を攻撃力として扱いダメージ計算を行う。」とある。
 つまり、いまのビッグベン−Kは4700未満の攻撃力(ATK)、守備力(DEF)を持つモンスターとの戦闘では負けることがほぼない状態にある。加えて、僕のデッキには4700の打点を突破できる攻撃力を持つモンスターはいない。ビッグベン−Kを処理するためには打点ではなく、効果で処理しなければならない。
「俺はこれでターンエンドだ」

 僕のターン、カードドロー。
 テラ・フォーミング(通常魔法)、Kozmoフェルブラン、Kozmoダークシミター、Kozmoダーク・ローズ、Kozmoエナジーアーツ(通常罠)、緊急テレポート(速攻魔法)。
 この手札なら、ダークシミターを特殊召喚し、その効果でビッグベン−Kを対象に効果を発動、そのまま破壊してしまえば済む。案外困った状況でもない。
「じゃあ、まずはフェルブラン(星1 光属性 サイキック族 ATK0/DEF0)を召喚」
 そして、フェルブランを除外して効果発動しよう。そう思ったときだ。
 僕は彼の墓地のカードに気づいてしまった。
 超重武者カゲボウ−C……。あいつは、たしか、墓地で発動する効果があったはずだ。正確には、墓地のカゲボウ−Cを除外して発動する効果、「自分フィールドの「超重武者」モンスターが効果の対象になった時、墓地のこのカードを除外して発動できる。その発動を無効にし破壊する。この効果は相手ターンでも発動できる。」。
 カゲボウ−Cに釘付けになっている僕に対して、友人の口の端がわずかに上がったのが映る。
 これでは相手の思う壺だ。しかし、この状況で僕が取れる最善の手はまだ残されている。危ないところだった。
「……テラ・フォーミングを発動。デッキからフィールド魔法『Kozmoエメラルドポリス』を手札に加える。そして、それを発動」
 いまの状況でエメラルドポリスを発動する旨味はない。だが、こいつは破壊されたときに大きな力になる。ないかもしれないが、そのときのために場に出しておこう。
「さらに、カードをセット。そのまま、エンドフェイズに移行する。そのとき500ライフポイントを払って、フェルブランの効果発動」
 僕のライフは8000から7500へ減少する。
「デッキから『Kozmo』カードを三種類相手に見せ、相手はその中からランダムに一枚選ぶ」
 僕は三枚のカードをデッキから取り出し、裏側にして選ばせる。
「選んだカードは僕の手札に加え、残りは墓地へ送る」
 友人が選んだカードは、Kozmoダーク・エルファイバー。
「これでターン終了」

「俺のターン、ドロー」
 ドローを待ち構えていた手が素早くカードを引いた。
 超重武者には効果耐性や戦闘耐性を持たせるモンスターもいる。ビッグベン−Kを破壊するなら今しかない。
「スタンバイフェイズにフェルグランを除外して効果を発動! 手札からレベル2以上のKozmoモンスターを特殊召喚する。ダークシミターを特殊召喚」
「ふむ、じゃあ手札のファイヤー・アーマーを捨てて、ビッグベン−Kを対象に発動。ターン終了時まで守備力が800ダウンする代わりに、戦闘、効果では破壊されない」
 くそ、そんなカードがあったか。効果破壊は無理だな。
「特殊召喚成功時、ビッグベン−Kを対象にダークシミターの効果を発動。対象のモンスターを破壊する」
 ビッグベン−Kを対象に取ったところで、カゲボウ−Cの効果は発動しないだろうが、いまはこれでいい。
「ビッグベン−Kは破壊されない」
「ならば、ダークシミターを対象に、伏せていたKozmoエナジーアーツを発動」
「それにチェーンはないよ」
「じゃあ、エナジーアーツの効果でダークシミターを破壊する。そして、相手の墓地かフィールドのカードを一枚除外する!」
「なるほど、対象はもちろんビッグベン−Kだろ?」
 彼は墓地のカゲボウ−Cへと手を伸ばす。
「いや、エナジーアーツは、対象を取る効果じゃないんだ」
「え?」
「エナジーアーツは、Kozmoモンスターを対象として発動するカード。だから、超重武者を対象に取られたときに発動するカゲボウ−Cの効果は発動しない」
「マジか。やられた」
 これによって効果は通りビッグベン−Kは除外され、装備されていたグレートウォールは墓地へ送られる。相手のフィールドにカードは一枚もない。
 ダークシミターが破壊されたことにより、新たなモンスターを特殊召喚する事ができる。
「破壊され、墓地に送られたダークシミターを除外し、デッキからレベル7以下のKozmoモンスターを一体特殊召喚することができる」
 レベル5のダーク・エルファイバーを特殊召喚。
「さらに、伏せていた緊急テレポートを発動。デッキからレベル3以下のサイキック族モンスターを一体特殊召喚する」
 レベル3のKozmoモンスター、フォルミートを特殊召喚。
「そして、フォルミートを除外して効果発動。手札からレベル3以上のKozmoモンスターを一体特殊召喚する」
 今度は手札にあるダーク・エルファイバーを特殊召喚した。
 これで僕のフィールドにはダーク・エルファイバーが二体並んだことになる。しかも相手ターンのスタンバイフェイズ中に。
「ようやくメインフェイズか」
 友人の手札は2枚。この状況でどう動く?
「でも何もしないでおこう。ターン終了だ」

 僕のターン。
 手札には、ダーク・ローズとフォアランナー。このターンでケリをつけられる。
 僕はフィールド魔法「エメラルドポリス」の効果を発動し、除外されているフォルミートを手札に加える。このとき、僕はライフを200失い、残り7300となる。手札に加えたフォルミートを召喚。そして、フォルミートの起動効果を500ライフポイント払って発動する(ライフは7300から6800)。除外されているダークシミターを特殊召喚する。
 フィールドにはダーク・エルファイバーが二体、フォルミート、ダークシミターが一体ずつ。そして手札には二体のKozmoモンスターが待ち構えている。
「バトルフェイズだ! フォルミートで攻撃!」
 攻撃力500のフォルミートでダイレクトアタック(8000から7500)。
「攻撃力の低いフォルミートから仕掛けたのは失敗だったな! 手札のココロガマ−Aの効果発動!」
「そのとき、ダーク・エルファイバーの効果を1000ライフポイント払って発動(6800から5800)。モンスター効果の発動を無効にし、破壊する!」
「なんと」
 その後、攻撃力2200のダーク・エルファイバー二体の攻撃は通り、ダークシミターの攻撃も通り、手札のダーク・ローズでとどめを刺した。

 実に気分がいい。Kozmoの初陣はうまくいった。
2016-09-14

勉強ができない理由

 僕は中学生の頃、勉強ができなくてどうしたらいいのかわからないと困るほど、勉強ができないわけではなかった。やる気は足りなかったかもしれないが、それでも人並みの成績は取れる方だった、と思う。だからなのか、基礎がわかっていない人の気持ちを理解することに難があるように感じる。
 
 9:6=X:2

 という式があったとして、大人なら誰でもXの値がであることはわかるはずだ。中学生でも、計算をすればわかるだろう。これを見ると、どうして中学生の頃、もっと成績が良くなかったのだろう? と疑問に思うかもしれない。事実僕は、過去に自分が使っていた参考書を見てそう思った。
 いまにしてみれば、中学生の頃の数学は実に容易だったのだ。高校数学にはいまも頭を抱えてしまうほどが、中学校で学ぶ数学に苦戦することはそうそうあることではない。

 では、なぜそうなのか?

 これは、僕が高校、大学と経て、学力を上げていったからだと言えるかもしれない。しかし、大学に通っている人は皆、場所は違えど同じことを学んでいるはずなのだ。それなのに、どうして大きな差ができてしまうのか。具体的に言うならば、人並みの成績しか取れなかった僕でも、なぜSPIの模試で3位になれてしまうのか。

 基本的にSPIで使う数学というのは中学校で学ぶことの応用、あるいは小学生が使う算数の応用でしかない。僕が入試というのを初めて体験したのは中学三年生の頃だ。あの頃は一日中勉強していた記憶がある。どういうわけか高校三年生の頃よりも鮮明に覚えている。そして、中学生のときに学んだことは、高校に入学しても使うことばかりだった。

 全ては繋がっている。ゆえに、同じ知識や情報を何度も利用する。。

 大学に入ってからはそういったことがほとんどなくなった。SPIぐらいでしか、方程式や比例なんかは使わない。高校でやった微分・積分、三角関数なんてやらない。去る者は日日に疎し、という言葉があるが、まさにその通り。使わない数学の知識はどんどん薄れていく。

 つまり、勉強ができることとは、言い換えれば勉強ができないこととは、理解力と記憶力がどれほどあるか、ということに他ならない。

 前者においてどうすればその力が上がるのかはわからないが、後者においては簡単である。
 何度も類題を解けばいい。そして頭に焼き付けるのだ。僕はそうやって勉強してきた。

 この二つの力を身につけるのは難しいかもしれない。しかし、一つ覚えれば、あとは同じやり方を当てはめることで基本的な問題は解けるようになる。しっかりと記憶すれば、理解力もそれについてくるはずだ。それでも理解できないのであれば、何度もやるしかない。空でも問題が書けるくらいまで覚えればいい。


 ただし、中学生の自分にこれを言い聞かせたところで、きっと聞かないだろう。だからこそ、もしも親になったとき、子供になんと言って勉強させるのかを考える必要がある。
2016-09-13

二度あることは三度ある?

 大学生活も終盤に差し掛かってきたなか、ほとんど講義もなく、家に篭る日々が続く。さすがに家にいたままではつまらないし、健康に悪い。そう思い、友人を誘ってシン・ゴジラを見に行くことにした。
 14時45分の回がちょうどいいということで、友人にLINEでメッセージを送る。既読マークはつくものの、返事はなかなか来ない。返信するのが遅い人だということは知っていたし、当日に突然誘ったこともあったので、焦ることはなかった。ただ、13時を過ぎても返信がなかったときはさすがに焦る。
 とりあえず、友人の家から近い駅に向かおうと自転車に乗る。途中、友人から返信。内容は「今からでも大丈夫か?」といったもので、俺はすぐさま「だいじょうぶだ」と返し、「いま駅に向かってる」と付け足した。
 駅に到着するも友人の姿は見えないのでどこにいるのか尋ねると、まだ家にいるとのことで、家に向かうことにする。マンションは居住者しか入れない仕組みになっているので、インターフォンを押してみる。すると「そこで少し待ってて」と言われた。
 まだ準備をしていなかったのか、変わらないなと苦笑いしながら、俺はマンションの駐車場で彼を待つ。子供達が近くで遊びまわっているのを眺めながら時間をつぶしていた。

 十数分経ってから彼が出てくる。どうやら彼女が家にいるようで、なにやら一悶着あったらしい。それはつまり俺のせいになるだろうか? と危惧したのだが、そうでもなかった。詳細を説明する必要はないので割愛するが、彼女の準備不足ゆえに招いた結果なのだ。彼はいろいろと苦言を呈し、俺はそれを聞いていた。そのまま映画館へ向かう。
「シン・ゴジラでいいの? スーサイド・スクワッドやってるみたいだけど」と彼は言った。実は俺はすでにシン・ゴジラを見ていて、彼はそれを知っていたのだ。なるほど、スーサイド・スクワッドもやっているのか。しかしだ。今日はシン・ゴジラの気分で家を出てしまった。今更スーサイド・スクワッドを見る気分にはなれない。
「いや、シン・ゴジラを見よう。怪獣見るなら映画館で見な、って名言もあるしな」
 かの有名な平成ガメラ第1作(ガメラ 大怪獣空中決戦)で、松尾貴史氏のセリフである。
 
 劇場で券を買うと、席は自由席であることがわかった。普段は指定席であるので、新鮮な気分だ。劇場内に入ると、平日だというのに結構な人が座っていた。そして年配の方が多い印象を受けた。きっと彼らも何度目かのシン・ゴジラなのだろう。
 どこでもいいので二人座れる席を探し、そこに座る。初めてシン・ゴジラを見たときよりも予告編が長く、その多くがお涙頂戴もので飽き飽きしていた。途中、面白そうなのもいくつかあったが、片手で数えられる程度だ。ようやく本編が始まる。二回目となるときっと気がつく点もあるはずだ。

 二回見ても面白いと感じた。飽きない。ゴジラが出ている場面はもちろん面白いのだが、出ていない場面も十分面白い。これはきっと三度目も見ることだろう。劇場の大スクリーンで見られるうちに見ておきたい作品だ。
2016-08-17

おいらはワンコ

 おいらはワンコ。名前はある。コタローと呼ばれている。
 これから飼い主様といつものように散歩に出かけるんだけど、今日はよく知らない人間の若造がついてきている。なんだこいつ。
 時々見かけるけどおいらは信用しちゃいない。人間はみんな飼い主様と同じじゃない。ほら、この笑った顔でなに企んでるんだかわかったもんじゃない。
 若造は飼い主様のことを「じーちゃん」と呼ぶ。馴れ馴れしいやつだ。
 おいらの首輪に手綱がつけられる。すぐさまおいらは足を動かした。早く出かけようぜ、飼い主様!
 ああ、なんか喉にひっかかりを覚えるなぁ。この前食った草が原因か?
「じーちゃん、コタロー咳してるよ。風邪かな?」
 うるせえな。喉に引っ搔かてんだよ。あともう少しで出そう。かぁ……ぺっ。よし、すっきしりした。
 おっ、ここはおいらの縄張りだ。マーキングしないと。ちょっ、飼い主様、待って。まだマーキングの途中! まあ、いいっか。
 おいらの後ろで二人が話す。
「コタローな、草食べるんだよ」
「え、ほんとに? 美味しいのかな?」
 別に美味しかねえよ。
「それで多分、調整しているんだろうな体内の」
 その通りでサァ、飼い主様。
 草を食べることで胃の調整をしてるんでサァ。
 いつものように河川敷の橋をくぐり、細い道に出る。おお、夕日が綺麗だぜ。
「おすわり……おすわり!」
 いけねぇ、うっかり聞き逃してた。おいらは言われた通り座る。すると飼い主様はおいらの手綱を解いてくれた。しばしの自由時間ってわけだ。よっしゃ、走り回ってやるぜ。
 おや、なんかいるな。こりゃ鹿か。山の方角だな。来ないとは思うが、ちょっと警戒しておくか。
「コタロー立ち止まったよ。俺がいるから怖がってるのかな」
 バカ言うな。誰がお前みたいな小僧を怖がるかよ。
「多分、鹿がいるんだな。それで警戒してるんだ」
 さすが飼い主様だぜ、わかってる。
「鹿? 見えない」
 お前じゃ無理だ。
 まあ、もう少し先に行っても大丈夫だろう。さあ、駆け回るぞ!
 草もたくさんある。今のうちに食っておこう食っておこう。

 いやぁ、たくさん走ったしたくさん草も食った。飼い主様も背中を向けてるし帰る時間か。
「おすわり」
 今度はすぐに座る。そして手綱が繋がれた。おいらは今来た道を戻る。
 これが散歩ってやつだ。
2016-01-05

メダロット9をプレイしました。

何年ぶりー??

こんにちは、ユウショウタです。
無事に生きています。
更新するのにいちいちPCからログインするのが、とてもとても面倒で、手を抜いていました。
ついに大学三年生も終わりを迎えようということで、就活以外ほとんど講義はないです。家でひたすら暇しているわけにもいかないので、今後は更新を増やしていきたい……。



そこで

2015年12月24日に発売されたゲームソフト「メダロット9クワガタバージョン)」をプレイしました。

で、僕よりも早い段階で全クリした人の感想コメントを見てみると、シナリオが粗いとかバグがどうだとか色々あります。
実際、処理落ちは気になります。だって3DSのソフトですよ? スマホやパソコンのゲームじゃないんだから、処理落ちって……。
バグもありましたね。僕の場合、メダリアがもらえるイベントでもらえませんでした。
ストーリーに関して言えば、設定はあるんだけどプレイヤーにしっかりと明示されないって感じで、もどかしい人もいるかもしれません。僕はラストのロクショウの台詞で感動してしまいましたが笑

ラスト、ね。最終決戦は是非ともバッテリーに余裕をもたせてやるべきです。




ではでは
2014-10-19

【6th Card】信じてみる【STRUGGLE】

前回の話→【5th Card】復讐者【STRUGGLE】




 おれに、人を守る役割を背負う力はあるのだろうか。
 逃がしてしまったモンスターのせいで、つまりはおれのせいで、関係のない人間が傷ついてしまった。おれではない人間が傷ついた。その時点でおれには最早、人を守る資格なんてないのかもしれない。これが普通の役割ならば、自ら役割を放棄することもできたであろう。ところが、おれの場合だとそれをすることはできない。自分の過ちを背負ったまま、役割を果たしていかなければならない。
 そんな重たい役割を背負い続けることがおれにできるのか。おれに相応しいのか。
 家に帰ると、古代人が見ていた番組で、街にモンスターが襲撃してきたことがニュースとして大きく取り上げられていた。しかし、目撃証言があいまいで、情報としては使えないものばかりだった。警察も動き出している。さすがに亡くなった人も多かったので、当然と言えば当然のことであろう。
 絢十の話によると、あの警察官はなんとか助かったそうだ。それを聞いたうえで学校へ向かったのだが、どうやらモンスターが街へ襲撃してきたことにより、しばらく休校となってしまった。生徒を外に出させるのは危険、という判断なのだろう。欠席扱いにならなかったのがせめてもの救いだった。
「大丈夫でしたか」
「一応な」
「ニュースを見て、私もなにかできることはないのかと思いましたが、場所がどこかわかりませんでした」
 あの場所へ行かなくて正解だっただろう。警察官一人を守るのも大変だった。
「なあ、守護者は何人いるかわかるか?」
「たしか、四人だったかと思います」
「四人か」
 多いか少ないかと人に尋ねられたら、きっと「少ない」と返事が来るだろう。だが、おれにしてみれば二人以上の時点で多い。役割は何人も同じというのはおかしいと思う。特に、その活動場所が近ければ近いほど。
「もしや」
「ああ、一人増えたぞ。しかも女だったよ」
「それは心強いですね」
 苦笑いするしかなかった。
「どうしました? ため息なんて……」
 気づかないうちにため息までついていた。
「別になんでもない」
 古代人に話して解決することでもないだろう。おれはただ、与えられた役割をやっていけばいい。そう自分に言い聞かせた。
「けんいちさん、もしかして悩んでいますか、役割のことを」
「……いや」
 見抜かれている。それでも、おれは素直に認めようとはしなかった。
「けんいちさんは、守護者の役割が自分一人でいいと思っているんですか?」
「そんなことはない。そうじゃなくておれは」
 言いかけて、自分が否定したはずの問いかけを認めてしまったことに気がついた。もう隠し続けるのもばかばかしいので話すことにした。
「おれはただ、自分以外にその役割に相応しい人間がいるのなら、そいつに任せればいいと思うだけだ」
「自分が守護者の役割に相応しくないと思っているんですか?」
「ああ」
「どうしてですか」
「さっき話した新しい守護者、そいつの親しい人間がモンスターに殺されたんだ。おれが、逃がしてしまった例のモンスターによってだ。おれが役割に相応しい人間なら、そんなことはなかったんじゃないかと思えてくるんだよ」
「それは……自分に厳し過ぎではありませんか」
 たしかにそれもあるだろう。しかしおれはいつも、可能性に裏切られてきた。「もしかしたら、自分にできるかもしれない」という言葉を信じて挑んできたものは、おれ以外の人間によって達成されてきたのだ。それを繰り返されていくうちに、いつしか努力を恐れる自分が現れた。その結果がこれだ。
「そうかもね。でも、守護者の役割っていうくらいなんだから、多くの人を守らなくちゃいけないだろ?」
「はい」
「なら厳しくもなる」
「守護者というのは、人間全体を守ることを役割としています。だから……」
 古代人は酷く言いづらそうにしていた。なんとなくその理由を察した自分がいる。
「多少の犠牲は仕方がないことなんだと思います」
 つまりは、いくら犠牲を出そうとも、それより多くの人間を救うことができれば正義ということになる。その考え方はあまり好きではない。
「でも! 私はその考え方に納得できません」
 古代人もおれと同じ思いのようだ。先ほどの発言はこの古代人自身の考えというわけではなく、守護者の役割を創った者の考えを読み取ったもの、ということなのだろう。
「私には、けんいちさんが役割に相応しくないとは思えません。けんいちさんのその姿勢、その心構えなら、大丈夫だと私は信じています」
「これから、また同じ役割を背負う人間が増えたとしても、か?」
「けんいちさんが、その思いを曲げなければ」
 本当にそうなのだろうか。この言葉を信じていいのだろうか。仮に、こいつの言葉が本意からのものだとしても、他者から見れば違うという可能性は大いに有り得る。
 おれはただ、特別になりたかっただけなのだ。
 自分だけの役割があれば、おれは特別になれると思っていた。そして、その役割が自分の居場所を作ってくれると信じていたのだ。
 そのことを古代人に話したら、あいつは困ったような笑顔を浮かべて、こう返してきた。
「欲張りですね」
 おれはなにも言えなかった。
 考えてみれば、彼女には封印の役割がある。それは彼女にしかできない役割だ。しかし自分だけの役割があることは本当に幸せなことなのだろうか。たった一人の役割なんて、自分しかいない寂しい場所しか作れないのではないだろうか。それでもおれは、自分だけの役割を欲したいのだろうか。
 そう己に問いかけてみても、簡単に考えが変わるとも思えない。でも、少しは変えたほうがいいのうではないだろうかと思えた。
「すみません」
「なんでお前が謝るんだ」
「私が言えた身ではないと思いまして」
「お互い様ってことでいいよ」
「はい……」
 こいつは納得していないだろう。だがこれ以上、この話題を続けていいものだろうか。おれには疑問だ。
 おれも少しは前へ歩かなければならない。いつまでも、自分に相応しい役割なのかどうかで悩んでいても、なにも変わりはしない。おれには一歩が必要だ。
 エルーへ向けた言葉、精一杯考えた言葉ではあったが、それを発してみると随分安っぽく聞こえた。
「信じてみる、エルーの言葉を」
 そして、おれ自身の可能性も。
「けんいちさん……いま、名前で呼んでくれましたね」
 無意識に名前を呼んだというわけではなかった。多分、自分のなかで、エルーを認めようという感情が働いたのだろう。エルーのこの言葉に対して、素直に答えてやることはできなかったが。
 人が助けを求めている声が聞こえた。またモンスターが現れた。
「役割、果たしに行ってくる」
「私も、けんいちさんが役割を果たすところをこの目で見届けたい。これからも、私はあなたの戦いをそばで見ていきます」
 おれはその言葉に対してなんと言って返せばいいのか、すぐには頭に浮かんでこなかった。言いたい言葉もいくつかあったことにはあったが、人がモンスターに襲われている以上、なにを言うのか考えている時間はない。半ば無視する形で家を飛び出してしまった。

 機械仕掛けで動く人形を思わせるモンスターだ。黄土色の頭に感情なんて欠片もないような真っ黒な二つの目を持っている。
 そんなモンスターが自身の掌を建物に向けると、少し時間を置いてからその建物は崩れた。その様子を、離れたところからエルーと共に見ていた。
「あのモンスターは手から衝撃波を放ちます。手を自分に向けられたら、すぐに避けてください」
 エルーの説明を聞いて、避けてはいけないのではないかと思うのは気のせいだろうか。そんなわけがない。どう考えても避けてしまえば、そこに被害が出るではないか。
「お前は隠れていろ」
 それだけ言って、モンスターへ奇襲をかける。最初の一撃は見事に命中した。モンスターが地面を転がっていく。
 おれにとって、このモンスターは実に相性の悪い相手だろう。相手に近づいて斬る、おれの戦闘スタイルといえばそれしかない。他にもなにかできることはあるのかもしれないが、おれはそれしかやらない。しかし相手は、敵との距離があろうがなかろうが、自由に攻撃できると思われる衝撃波を放つという。中距離から攻めてくる絢十と戦っているみたいなものだろう。
 モンスターに攻撃の隙を与えてはいけない。おれはモンスターが起き上がる前に再び攻撃を仕掛ける。だが、モンスターは起き上がらずに、地面に向けて衝撃波を放った。その反動で宙に舞う。
 追撃のためにおれは跳躍するが、やつの衝撃波によって追撃を阻まれてしまう。おかげで地面に叩き付けられてしまった。一つ遅れて、モンスターも地上へ降りてくる。
 起き上がると、モンスターがこちらに掌を向けていた。避けるという選択肢はあるが、それでは他への被害が及んでしまう。いまのおれ自身のダメージなら、耐えることも不可能ではない。連続で耐えるのは難しいが、一度だけならできるはずだ。
 衝撃波。刀と全身でそれを受け止める。
 なんとか持ち堪えてはいるが、足が地面を滑っていく。それでも歯を食いしばる。そんなおれに対して、やつは両手から衝撃波を放ってきた。単純計算で二倍の衝撃波。かなり耐えるのが辛い。しかし、これをやめるわけにはいかない。ここで防ぐのをやめてしまえば、また後悔することになる。おれが守護者であるなら、その役割に相応しくありたいと思うのならば、負けられない。
 おれの左手に、黒のカードが握られる。それを使うことにした。
 手からカードが消えると、おれは瞬間的にモンスターへ近づき、そして真一文字に斬り伏せる。いつもこうやってモンスターに攻撃していたのだろう。黒のカードを使って意識が飛ばなかったことなんて初めてだった。
 振り返ってみると、モンスターが立ち崩れていた。そこまで相手にダメージを与えていたわけではない。ということは、黒のカードで与えるダメージがより大きかったということなのだろう。
 もしかすると、おれの意志に応じて、技が強くなったのか。
 そんなことを考えているうちに、モンスターは赤い光に包まれてカードへと変化していた。初めて見る、赤いカードだった。
「けんいちさん」
 エルーが駆け寄ってくる。
「攻撃を避けようとしませんでしたね」
 どうやら気づかれていたようだ。避けられなかったと思われているのではないだろうか、とも考えてはいたのだが。
「やっぱり、けんいちさんなら相応しいと思います」
 そうありたいと思う。少なくとも、一人くらいにはそう思われていたい。
「ありがとう」
 でもやっぱり、自分だけの役割が欲しいという気持ちがなくなったわけではないのだ。こういうのも悪くはないかな、と思うようになっただけ、一歩前進したのかもしれないが。だとしても、おれは欲張りなままだった。





次回→
2014-09-06

【5th Card】復讐者【STRUGGLE】

にほんブログ村 小説ブログへ
にほんブログ村

前回の話→
【4th Card】狙われた街【STRUGGLE】


木崎剣一の登校中に街にモンスターが現れた。そこへ駆けつけた剣一が目にした光景は、モンスターによって襲撃された街だった。そこへ金澤絢十も現れ、二人でモンスターを探していたときに……。





 どこからか飛んできた自動車にぶつかったが、なんとか無事でいた。正直なところ痛いことは痛いのだが、我慢できない痛みではなかった。絢十が発砲することで衝撃を殺してくれたおかげかもしれない。いや、そもそもそれ以前に、守護者の力のおかげだと考えたほうが妥当だ。
 自動車を飛ばしてきたのは別のモンスターだった。やはり他にも近くにいたのだ。それが頭にあったはずなのに、敵の攻撃を受けてしまうとはなんとも情けない話だろう。
「木崎、大丈夫か」
 絢十がおれのところへ駆けてくる。
「なんとかな。そっちのモンスターはお前に任せたぞ」
「おう」
 自動車が飛んできた方向はどちらだろうかと思い、周囲を見回してみる。モンスターはすぐに見つかった。大きな一つ目が特徴的だ。加えて、見た目からして明らかにパワータイプなモンスターだ。見た目だけで判断してしまうのはよくないだろうか。
 よし、人を守るためにマナを使おう。おれは絢十の得物、つまりは銃をコピーさせてもらった。刀と銃、これで近距離でも中距離でも戦うことができる。
 モンスターが道にある自動車を棍棒で薙ぎ払いながら近づいてくる。動きは速くない。パワー重視のやつは、動きが遅くなってしまうのがお決まりのようだ。
そんなモンスターに向けて発砲する。攻撃は棍棒で防がれてしまった。その瞬間に、モンスターとの間合いを詰める。敵が攻撃態勢に入る前に、こちらから刀で攻撃。手応えあり。どうやらおれには、瞬間的速さなら負けない素質があるようだ。
だが休む間もなくモンスターが迫ってくる。距離を保つために狙撃するが、それでもやつは攻撃を耐えた。そして自身の武器であるはずの棍棒を投げてきたのだ。回転はないためかなりの重量があると見える。当たったら相当痛いだろう。しかしスピードに関しては決して速くはない。容易に避けることができた。
投げられた棍棒にばかり意識が向かい、モンスターが向かってきていることに気づかなかった。棍棒を持たないやつの動きは速かった。棍棒をかわしたままの体勢で、迫り来るモンスターへの反応が遅くなったおれはまんまと捕らわれてしまった。
 なんて馬鹿力だ。全く抜け出せない。
 
 意外な助太刀だった。おれを捕らえて放そうとしなかったモンスターの気をそらしてくれたのは、先ほどの警察官だった。彼の発砲のおかげでモンスターの意識がそちらに向かい、その隙におれは抜け出すことができた。
 ありがたいことではあるが、守る側が助けられるというのもおかしな話だ。やはりおれはこの役割にふさわしくないのかもしれない。いや、そんなことを言うのはお門違いか。警察官はただ「市民を守る」という役割を果たしただけのことだ。
 そんなことよりも、いまはとにかくこの警察官を逃がすために尽力しなくてはならない。モンスターに彼が狙われている。効果の時間切れのせいかコピーした絢十の銃が消えてしまったが、黒のカードを使うことにした。
 この警察官を守りたい。おれの意志に応じてか、ついにカードが現れた。それをかざす。【瞬速斬】発動。

 気がついたときには一太刀浴びせた後だった。しかし、モンスターはカードへと還元されていなかった。ダメージが充分ではなかったということか。全く攻撃が効いていないわけではない様子だが。
 あと数撃で倒れるはずだ。ならばやるしかない。刀を振り上げる。そのときなにかが近づいてくるのを感じた。刀を振り下ろそうとする手を止める。見ると左側からやってくる女がいた。古代人ではない。そいつは金色の長刀を携えていた。
 この前、絢十を見たときと同じ感覚がする。直感的にわかったのは、この女も守護者の役割を背負っているのだな、ということだ。女はこちらに目掛けて走ってくる。止まる気は全くなさそうだ。
「モンスターはわたしが倒す!」
 彼女の薙刀でモンスターが薙ぎ払われた。こう思ってしまうのは失礼だが、女性なのになかなかなパワーの持ち主だ。守護者の力のおかげでもあるかもしれないが、それでもこのパワータイプなモンスターを地面に叩きつけるとは。
 女は、叫び声と共にモンスターへ攻撃を続ける。これではどちらがモンスターなのかわからない。
 最後の一撃を食らったためか、モンスターはカードへと姿を変えた。カードに近づいて、女はそれを拾い上げた。
「こいつじゃない」
 女は低くつぶやいた。もしかすると、探しているモンスターがいるのかもしれない。
 絢十がやってくる。どうやらモンスターを倒してきたようだ。やはりあのモンスターは絢十が相手をして正解だったというわけだ。
「そっちはどう、だ?」
 言ってから、絢十はなにかを察した。説明は後でもいい気がしたので、おれは言った。
「ひとまずモンスターは彼女が倒してくれた。そんなことよりもあの警察官を安全なところへ連れていこう」
 おれの提案に絢十はうなずいた。しかし、女は明後日の方向を向いている。
「君はどうする?」
「まだこの近くにモンスターがいるはずなの。わたしはそいつを倒すまではここから離れられない」
 この女が一人でモンスターと戦いに行くことに、いささか不安を感じる。先ほどの戦いぶりを見れば任せられる気もするが、こいつは後先考えない戦いをしそうだった。
「ならオレ一人で運ぶから、木崎と、えーと……」
 絢十が言葉に詰まった。その理由を察したのか、女は口を開く。
「瀬戸紫苑」
「……木崎と瀬戸さんはモンスターのほうをよろしく」
 絢十はバイクに警察官を乗せて去っていった。それを見届けることなく、瀬戸は足を動かした。
「おい」
 あとを追った。
 人間を守るためにモンスターを倒すことは役割ではあるが、ここまで積極的に動けるだろうか。ましてや、先ほどのモンスターへの攻撃を見ると、どうも使命感に駆られての行動というふうには見えなかった。怒りによる行動だ。
 瀬戸が足を止めるのを見て、おれも同じく足を止めた。ついにモンスターを見つけたのだ。
 前方に立つモンスターは見覚えのあるやつだった。最初に出会した、オオカミの姿に似ているやつだ。
「あいつはわたしが倒す。君は手を出さないで」
 先ほども似た台詞を聞いた気がする。
「どうしてそこまでこだわる」
「……あのモンスターは、仇。わたしの友だちや、家族、みんなの仇」
 おれがあいつを逃がしてしまったために傷つく人を出してしまった。そういうことなのか。それはつまり、半ばおれが殺してしまったみたいなものだろう。彼女がモンスターへ過剰な攻撃をするのはおれへの恨みでもあるのだ。
 モンスターが迫ってくる。特性がスピードであることは間違いない。おれはすぐさま距離を取る。素早く動くやつと戦うには、こちらがより素早く動くか、あるいはあいつの動きを抑えなければならない。敵の攻撃が速いのなら、一旦、こちらが様子を見るべきだろう。だが瀬戸はそうしなかった。感情のままに、モンスターの突撃へ突っ込んでいってしまったのだ。実に無鉄砲なことだ。
 相手の武器は爪、それに対して瀬戸は長刀。リーチや破壊力では瀬戸のほうが勝っている。しかしながら、スピードでは決定的に負けてしまっているのだ。当然、モンスターは瀬戸の攻撃をかわして、隙を突いてくる。間一髪で攻撃を避けたが、瀬戸が何度も避けられそうには思えなかった。
「お前一人じゃ勝てない。おれもやる」
 黙って見ているわけにはいかなかった。モンスターの、彼女への攻撃を防いでやる。
「邪魔しないで!」
「おれにもやらせてくれ。あいつはおれが逃がしちまったモンスターでもあるんだ」
 そう言った瞬間、瀬戸の目の色が変わったのをおれは見逃さなかった。初めて、人からそんな眼差しを向けられたかもしれない。親の仇を見るような、そんな目だった。
「それならなおさら無理。そんな人の腕なんて信じられるわけない。いいから君はなにもしないで……」
 瀬戸がモンスターに向かっていく。そんなふうに言われてしまっては、なにも言い返せなかった。
 瀬戸は休むことなく、敵に攻撃を当てようとする。しかし、モンスターのスピードには全くついていけず、攻撃は虚しくも空中を斬ることくらいしかできていなかった。彼女の攻撃が当たらないだけならまだいいほうだが、敵の反撃を食らってしまうと、さすがにおれも動かずにはいられない。
 敵の反撃が彼女に、すんでのところで当たりそうになった。おれはそれを捌いてやった。あれこれ文句を言われてしまうのだろうが、目の前で人が傷つくのを黙って見ているよりかは何倍もマシだ。
「なにもしないでって言ったでしょ……」
 ぼろぼろになりながらも彼女は強がってみせた。大した威勢だ。
「なにか策はあるのかよ」
 その問いかけに、すぐには返事ができない様子だった。
 おれとしては、このモンスターを倒すのは誰であっても構わない。しかし倒すのならいましかない。瀬戸がこの調子では、それができるとは言い難いものがある。やつは自分一人の手で倒すことにばかり意識が向かい、敵に勝てるかどうか全く考えていない。
 ではおれならできるのか。
 残念ながら、その問いにも自信を持って「イエス」と答えることは難しい、先ほどのパワータイプのモンスターとの戦闘でマナのほとんどを使ってしまったのだ。青のカードは使えても黒のカードは使えないかもしれない。いま、マナを作ることも考えてはいたが、敵がスピードタイプとなるとそんな余裕はなかった。
 残された選択肢は一つしかない。おれが彼女をサポートし、彼女がトドメを刺す。それがいまできる最善の一手だ。問題は彼女がこの作戦に乗るかどうかだが。
 そんなことは気にしていられないか。不本意ではあるだろうが乗ってもらうしかない。
「おれがあんたをサポートする。だからあんたがトドメを刺してくれ」
「いや。わたし一人の手で……」
「いまここでやつを倒さないとおれの二の舞を演じることになるぞ」
 要するに、彼女と同じ目に遭ってしまう人間を出してしまうということだ。しかも、彼女自身の手によって。それはおれも絶対に避けたい。
「……わかった」
 渋々承知してくれた。
「トドメを刺すときは、あんたの強い意志に応じて出てくる黒いカードを使ってくれ」
「黒い、カード? さっきの青いカードじゃなくて?」
「まあ、青いカードも使ってみるといい。そのときになればわかるよ」
 上手くは説明できない。感覚でわかってくれるだろうと信じている。
 おれはモンスターに刃を向けた。二度目の戦い。速さが上の敵には先手必勝で攻める。瞬発力には自信があった。初速ならばおれのほうが敵より上だ。
 攻撃が見事モンスターに当たる。続く二撃目を食らわせようとしたところで、向こうが本領を発揮してきた。自慢のスピードで距離を取られてしまう。
 ところが、このモンスターの動きは速いが、頭の回転までもそうであるとは言い難いものがある。瀬戸は、モンスターがおれから離れるまさにそのタイミングを狙っていた。
 いつの間にか彼女の手に握られていた、その黒のカードが消えた。得物である長刀が光をまとう。力が刀身一点に集中している。その状態で瀬戸はモンスターに襲いかかる。
 たった一撃だった。それでも、とてつもなく重い一撃に感じられた。それはさながら巨人の一撃、【タイタンハンマー】とでも名づけようか。
 攻撃を食らったモンスターは青白く光り、やがて青のカードとなって消えた。
「わたしが、倒したの?」
 我に返った瀬戸は、やはり自分が倒したことを覚えていなかった。どういうわけかは知らないが、あの黒いカードと使うと意識がなくなるのだ。
「あの青いカードが、あんたが倒したっていう証拠だよ」
 瀬戸は落ちている青のカードを拾い上げた。
「この二枚はどうすればいいの」
「あんたが持っていればいい。戦いはまだ続くんだ」
「やっぱり、役割っていうのは本当なんだ。これで終わり、というわけにはいかないんだね」
 おれはうなずいた。モンスターはまだいる。守護者の役割を背負ってしまったからには、人間を守るために戦わなければならない。しかし、おれにはその資格が本当にあるのだろうか。
「木崎だっけ、君の名前」
「ああ」
 どうしておれの名前を知っているのだろうかと思ったが、そういえば先ほど、絢十がおれの名前を呼んでいた。そのときに覚えられたのだろう。
「忘れないから」
 怒りも憎しみも感じられる一言。それでいて、おれ自身の罪を確認させるものだった。おれはこれを背負って戦わなければならないのだ。




次回→6th Card】信じてみる【STRUGGLE】
2014-07-14

テスト前なので

こんばんは、ユウショウタです。

ストラグルの更新が遅れてしまって申し訳ございません。
ただいま絶賛テスト期間中でございまして、来週くらいになると少し楽になるので更新できるようになります。
今週はキツいものがあるので、どうかしばしお待ちを!

QRコード

QR

Powered By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ

ごあいさつ

ユウショウタ

Author:ユウショウタ
できることなら趣味に没頭したい、そんな野郎の自己満足なブログです。

最新記事
どうか『STRUGGLE』を読んでください!
カテゴリ
小説は『STRUGGLE』のカテゴリです。
見たくない現実
でも気にはなりますよね〜?
[ジャンルランキング]
小説・文学
3190位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
オリジナル小説
724位
アクセスランキングを見る>>
素晴らしいお方たち
コメントしてくれてありがとうございます。
FC2ブログランキング
押してくださると嬉しいです。

FC2Blog Ranking

これまで来ていただいた方々
すげー、こんなに来てたんだ!
フリーエリア
にほんブログ村 小説ブログへ
にほんブログ村
リンク
リンクフリーです!
記事検索
あなたの探したいものは何ですか?
月別まとめ
以前と比べると、書き方に違いが見られますが、決して別人になったわけではありません。決して別人になった訳ではありませんよ!
現実を見るんだ
さて、今日は何の日でしょうか。
09 | 2019/10 | 11
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる